慶尚北道高霊郡(コリョングン)双林面(サンリムミョン)合伽里(ハプカリ)のケシル村にある延豊古宅(ヨンプンコテク)は、築150年の由緒ある韓屋です。
忠清北道槐山郡(ケサングン)の延豊県(ヨンプンヒョン)の県監を務めた祖先が建てた4棟の建物のひとつで、母屋に相当する建物です。この韓屋は韓国戦争(1950~1953年)時に爆撃を受け焼失したものを再建した建物で、現在はケシル村を訪れる人々の宿泊施設や村の行事を行う場所として利用しています。
延豊古宅はケシル村の伝統婚礼体験場として使われている花山斎(ファサンジェ)の建物の裏手にあります。ケシル村でも風水地理的にたいへんよい土地とされる明堂(ミョンダン)にあたるこの場所は、背後に竹林があり、爽快な雰囲気が感じられます。この韓屋は2010年に復元されましたが、古の時代におよそ2,500平方メートル(約800坪)の敷地に32室の部屋があったという母屋は復元を経て、最新の設備を兼ね備えた全4室の建物によみがえりました。このうち、竹室と梅室は広々としており、主に団体のお客様におすすめの部屋です。炊事場は別の建物にあります。ここは庭が広く、バーベキュー施設も完備しており、村でお祝い事があるときにもよく使われるとのことです。中庭にある井戸やベンチ、手入れが行き届いた草花などが韓屋の静けさをより生かしています。
延豊古宅があるケシル村は朝鮮時代前期の文臣であり学者であった金宗直(キム・ジョンジク)先生の子孫が集まり形成した善山金氏(ソンサン・キムシ)の集姓村です。村内には民俗資料62号に指定され朝鮮時代に起きた士林の四大惨禍のひとつで戌午士禍(1498年)のとき災いを被った金宗直先生の宗宅(本家)や文化財資料第111号の道淵斎(トヨンジェ)などがあります。
近隣には大伽倻博物館にある金宗直先生記念室には有形文化財第209号の佔畢斎文籍遺品が展示されています。花が咲く美しい谷ということで開花室とも呼ばれるこの地ですが、その背後に花が満開となる花開山(ファゲサン)や350年前からあるという竹林、そして蝶が羽を休める形に似ていることから名付けられた蝶舞峰(チョンムボン)などが村の周囲を温かく包み込んでいます。村の八割以上の人々が伝統韓屋を保存・維持しており、韓屋の瓦屋根の曲線は村の暖かな風情と調和しています。
この村は2001年に行われた美しい村作り事業や2005年農村体験村造成事業を通じて、現在の姿に生まれ変わりました。事業では村に元々からあった古い家屋を補修・新たに建築したり、土で固めた石塀や散策路の造成、そして細部にいたるまで造景し、より風情ある村づくりに努めました。他にも住民や訪問される方々が便利に楽しめるよう村の休憩所や体験館、インターネットカフェなども開設しました。ケシル村は住民みながともに力を出し合い、村を活気づける代表的な例としてその成果を認められ、2011年には大韓民国農漁村マウル大賞において大統領表彰を受けたこともあります。
2003年には農協ファームステイ村としても指定され、自然と伝統を生かした様々な体験プログラムも実施しています。サツマイモ掘り、田植えなどができる「農業体験」、礼節教育と伝統茶の試飲を行う「伝統教育体験」、凧や藁工芸などにチャレンジできる「ものづくり体験」、飴や油菓などを作る「伝統飲食体験」、ブランコや板跳びなど村の広場で楽しむ「伝統遊び体験」、ドジョウ掬いや氷上そりが楽しめる「自然体験」などがあります。
このように季節ごとに自然の美しさやさまざまな伝統を活かし盛りだくさんの体験プログラムを実施しているケシル村は代表的なファームステイ村としての地位を確立し、毎年5、6万人の観光客が訪れる名所となりました。 伝統韓屋体験や様々な楽しみがあるケシル村で古きよき田舎の情緒を体験してみるのはいかがでしょうか。